2008-11-30(Sun)
傾城のひと 4-4
傾城のひと 4-4
敵は強い。ゆえに無傷で完全勝利などという甘い考えは端から捨てている。多少の負傷はやむを得ないだろうと。
標的はリーダーのみ。他の二名には目をくれない。しかし、日々の鍛錬によって体得している鋭敏な感覚を頼りに、両脇からの致命的な攻撃だけは避ける心算であった。
ほとんど捨て身で向かってくるケインに対し、刺客たちは油断なく身構える。まずリーダーの脇を守る刺客二人の剣が迫る。それをケインは最小限の動きでかわし、頭に肉薄した。
ギィン、と刃がぶつかり合う音が響く。膂力ではケインの方が上だ。彼は相手の刀を力でもって右方向に振り払う。相手の利き手とは反対方向に刀を流し、僅かな時間を稼ぐ。その間に、先程凌いだ他の刺客の一撃が左側から飛んでくる。
狙われているのは左手であり、利き手ではない。力の加減、得物の長さから考えて、致命的な傷を与えるための攻撃を仕掛けてきている訳ではなさそうだ。一瞬の視認で状況を確認すると、ケインは判断を下した。
この一撃は、戦闘に支障がない程度に喰らうしかない、と。
後に来るだろう痛みを覚悟する。
「ケイン殿!?」
脇からの攻撃を避ける様子を見せないケインに対し、クレージュの悲鳴のような声が彼の名を呼んだ。
ケインはその声に微かな違和感を感じる。しかし些細なことに気を払っている余裕などなかった。まさか小国とはいえ一国の王子であるケインが、周囲の攻撃に全く頓着せず向かってくるとは思いもしなかっただろう刺客の頭に対して、必殺の一撃を喰らわせることができる機会は、今しかない。
渾身の力を込めて剣を振う。
――確かな手応えを感じた。
それと同時に、鋭い金属音が耳に届いた。そしてケインは彼を取り巻く状況を瞬時に悟った。他の刺客からの攻撃が一向に来ないこと。そして先程の違和感。それはクレージュの声があまりに近い位置から聞こえたがゆえのものだったのだと。
引き離したはずの守り人は、逆にケインに付いてきていたのだ。……先刻ケインが渡した剣を手に携えて。
外側からの攻撃を避けようともしないケインに対し、我が身も顧みず反射的に割って入ってしまったのである、彼女は。
流石の刺客も、まさか素人同然のクレージュに剣を受け止められるとは思いもしなかったのだろう。また、クレージュに対して攻撃を仕掛けて良いものか判断もつかなかったに相違ない。次の行動に移りかねたらしく、動きが固まっていた。
ケインはその隙を逃すことなく、剣を一閃させる。相手の肩から肘にかけて容赦なく斬りつけた。肉を断つ音。舞う血しぶき。あまりの衝撃と激痛に、刺客は剣を取り落としていた。
その一撃で、大勢が決まった。
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標的はリーダーのみ。他の二名には目をくれない。しかし、日々の鍛錬によって体得している鋭敏な感覚を頼りに、両脇からの致命的な攻撃だけは避ける心算であった。
ほとんど捨て身で向かってくるケインに対し、刺客たちは油断なく身構える。まずリーダーの脇を守る刺客二人の剣が迫る。それをケインは最小限の動きでかわし、頭に肉薄した。
ギィン、と刃がぶつかり合う音が響く。膂力ではケインの方が上だ。彼は相手の刀を力でもって右方向に振り払う。相手の利き手とは反対方向に刀を流し、僅かな時間を稼ぐ。その間に、先程凌いだ他の刺客の一撃が左側から飛んでくる。
狙われているのは左手であり、利き手ではない。力の加減、得物の長さから考えて、致命的な傷を与えるための攻撃を仕掛けてきている訳ではなさそうだ。一瞬の視認で状況を確認すると、ケインは判断を下した。
この一撃は、戦闘に支障がない程度に喰らうしかない、と。
後に来るだろう痛みを覚悟する。
「ケイン殿!?」
脇からの攻撃を避ける様子を見せないケインに対し、クレージュの悲鳴のような声が彼の名を呼んだ。
ケインはその声に微かな違和感を感じる。しかし些細なことに気を払っている余裕などなかった。まさか小国とはいえ一国の王子であるケインが、周囲の攻撃に全く頓着せず向かってくるとは思いもしなかっただろう刺客の頭に対して、必殺の一撃を喰らわせることができる機会は、今しかない。
渾身の力を込めて剣を振う。
――確かな手応えを感じた。
それと同時に、鋭い金属音が耳に届いた。そしてケインは彼を取り巻く状況を瞬時に悟った。他の刺客からの攻撃が一向に来ないこと。そして先程の違和感。それはクレージュの声があまりに近い位置から聞こえたがゆえのものだったのだと。
引き離したはずの守り人は、逆にケインに付いてきていたのだ。……先刻ケインが渡した剣を手に携えて。
外側からの攻撃を避けようともしないケインに対し、我が身も顧みず反射的に割って入ってしまったのである、彼女は。
流石の刺客も、まさか素人同然のクレージュに剣を受け止められるとは思いもしなかったのだろう。また、クレージュに対して攻撃を仕掛けて良いものか判断もつかなかったに相違ない。次の行動に移りかねたらしく、動きが固まっていた。
ケインはその隙を逃すことなく、剣を一閃させる。相手の肩から肘にかけて容赦なく斬りつけた。肉を断つ音。舞う血しぶき。あまりの衝撃と激痛に、刺客は剣を取り落としていた。
その一撃で、大勢が決まった。
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theme : 自作小説(ファンタジー)
genre : 小説・文学